(星図は11月15日午後8時頃の様子です)
だいぶ寒くなってきました.実を言うと,毎晩のように外で星を見ているような生活をしていると,この11月の寒さが年間で一番こたえます.まだ体が寒さに慣れていない上に,昼間は結構暖かいのに夜になると急に寒くなるからです.また,この時期に必要以上に暖かい支度をしてしまうと,もっと寒い12月や1月の寒さに耐えられなくなってしまうので,この時期は出来るだけ薄着で通しています.冬の美しい星空を堪能するために,ここは我慢!といったところです.
暗くなったら夜空を見上げてみましょう.そこは秋の星座たちのオンステージです.この季節の星座たちは少し特別です.なぜなら,そのほとんどはギリシャ神話の同じお話に登場するキャラクターばかりだからです.星座の図鑑などでは主にペガスス*1の四辺形から秋の星座をたどる方法が紹介されていますが,筆者はあんまりおすすめしません.なぜなら,この四辺形は暗い星ばかりで見つけにくいからです.ここはひとつ,見つけやすいカシオペア座からたどってみましょう.そのカシオペア座は頭の真上よりやや北よりに見えています.「W」または「M」の形の星の並びが見つかりましたか?カシオペア座は古代エチオピア王国の王妃の姿です.今の季節だと「M」に見えるでしょう.そこで,今度は「M」の上を探してみます.「M」の上にやわらかいカーブを描く星の並びがあります.カシオペア王妃の娘アンドロメダ姫の姿です.このカーブを頭の真上に向かってたどっていったところにペガススの四辺形があります.四辺形はちょうどペガススの胴体の部分です.アンドロメダ姫がおばけくじら(暗い星ばかりで見つけにくいのですが,ペガスス座の南東の方向にあるくじら座です)に襲われたとき,勇者ペルセウスを乗せて飛んできたのがこの天馬ペガススです.勇者ペルセウスはアンドロメダ姫の足もと,カタカナの「イを横にしたような星の並びです.やわらかいカーブのアンドロメダ座にくらべ,どこかゴツゴツした星の並びはたくましい勇者の姿にぴったりです.
この他に,暗い星ばかりで目立たないケフェウス座(古代エチオピア王国の王様.実は神話中でもこの王様は頼りない王様で,星座になっても存在感が薄いようです)を加え,秋の夜空は全体がギリシャ神話の大きな物語絵巻なのです.
なお,10月24日から25日にかけて大アウトバーストを起こして40万倍にも明るくなったホームズ彗星(17P/Holmes)は現在(2007年11月6日)もまだペルセウス座の中に明るく見えています.この彗星がいつまで明るい状態を保っているか分かりませんが,これからは視直径がさらに大きくなっていき(ただし全体としては淡くなります),11月中旬には満月と同じ大きさになるかもしれないと言われます.前回(1892年)のアウトバーストの時には2度目のバーストもあったそうですから,しばらくはこの彗星から目が離せません.ふれあいの里天文台の望遠鏡でも迫力ある姿を楽しめますので是非リクエストしてくださいね(ただし,彗星はその日の観望対象の最後になる場合が多いですのであらかじめご了承ください).
ホームズ彗星については「ホームズ彗星大増光特集」のページも合わせてご覧ください.